マレーシアのバトゥ洞窟で、私は財布を狙われました。
気づけたのは、観光地に行く前の情報収集と、普段の防犯ルーティーンのおかげでした。今回は元警察官として15年、街頭で人を見てきた私が、外出先でターゲットにされないための個人的な考え方をお届けします。
「スリに狙われやすい特徴について考え、狙われにくい人になること」をキーワードに、犯人がターゲットを選ぶ選定基準を考察しながら話を進めていきます。
※バトゥ洞窟で実際に何が起きたかは、体験談として別記事に書きました。→ 【体験談】バトゥ洞窟でスリに狙われた|元警察官パパの子連れ海外・防犯術【マレーシア】
この記事でわかること
- スリの認知件数は激減しているのに、体感が減っていない理由
- スリが獲物を選ぶ2軸のマトリックス(所有資産 × 警戒心)
- 子連れが構造的に「狙われる側」へ入ってしまう理由と、抜け出し方
- 警察官が街頭で犯人を見抜く4つの着眼点(裏返すと防犯チェックリストになる)
- 財布・スマホを抜かれたときに、実際に何が起きるか
- スリを見かけたときの110番の言い方(セリフ台本つき)
1. 「スリは減った」という統計と、現場の感覚のズレ
まず数字から始めます。
警察庁の犯罪統計によると、日本国内の「すり」の認知件数は年間1,000〜1,500件前後で推移しています(令和6年は1,435件)。ピークだった平成15年には2万5,338件発生し、平成元年から15年までは毎年2万件を超えていたので、けた違いに減りました。キャッシュレス決済が広まって「現金をたくさん持ち歩く人」が減り、防犯カメラが街を覆ったことが大きいと言われています。
刑法犯全体(令和6年・73万7,679件)のうち約7割(68.0%)は窃盗犯(50万1,507件)ですが、その大半は自転車盗(17万4,020件)・万引き(9万8,292件)・車上ねらい(2万2,934件)です。スリはそのなかの「非侵入窃盗」の一部で、窃盗犯全体に占める割合は0.3%と、件数だけ見れば少数派です。
出典:警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」(令和7年8月)
ただし、私は「この数字を信じすぎない」ほうがいいと思っています
現場にいたころの実感で言うと、スリの被害届は、思っているほど出てきません。
理由は単純で、やられた本人が気づかないからです。
スリの技術の本質は「盗む」ことではなく「気づかせない」ことです。だから被害者の多くは、その場では何も起きていないと思っている。数時間後、会計のときに財布がないことに気づく。そして「どこかで落とした」と考える。
その結果、警察の窓口に出されるのは被害届ではなく、遺失届になります。統計上、それは「スリ」ではなく「落とし物」です。
つまり認知件数は、「盗まれたと本人が気づき、なおかつ届け出た件数」にすぎません。減っているのは事実ですが、減り幅のうちどれだけが”届け出られなかった分”なのかは、誰にもわからないのです。
2. 犯罪者の視点|ターゲット分類の4タイプ
ここからが本題です。なお、ここから先は私の推測を多分に含みます。断定ではなく「たぶんこう考えている」という読み物として受け取ってください。
スリが獲物を選ぶとき、おそらく2つの軸で考えています。
- 所有資産 — 金を持っていそうか(リターンの大きさ)
- 警戒心 — 隙があるか(リスクの低さ)
この2軸で人を4パターンに分類すると、次のようになります。
スリ目線のターゲット分析マトリックス
| 警戒心が強い(隙がない) | 警戒心が弱い(隙だらけ) | |
|---|---|---|
| 金を持っていそう (リターン大) | 優先度:中 難敵・観察対象 ・ハイブランドや高級時計 ・バッグは閉め、体の前で保持 ・周囲に目を配り、ながら歩きをしない 心理:「狙いたいがリスクが高い。混雑の一瞬やハプニング待ち」 | 優先度:最上 ★最優先の標的 ・全身をブランド品で固めている ・ポケットから長財布や高級スマホが覗く ・旅行先や高級店帰りで開放的 ・酔っている/スマホに夢中 心理:「ハイリターンかつ安全。真っ先に狙う」 |
| 金を持っていなさそう (リターン小) | 優先度:無 完全スルー ・質素な服装・使い込んだバッグ ・ジッパーを閉め、防犯意識が高い ・不自然な接近にすぐ気づく 心理:「苦労しても実りがなく、捕まるリスクだけがある」 | 優先度:低〜中 数撃ち・手軽な標的 ・質素で一般的な服装 ・リュックのジッパーが開いている ・後ろポケットに貴重品 ・歩きスマホ、居眠り、イヤホン 心理:「実りは少なくても、ノーリスクで抜けるなら狙う」 |
一番狙われやすい人はだれ?
あなたがスリだとします。先ほどの表の中で、一番狙いたいのはどのエリアの人でしょうか。
おそらく、ほとんどの人が「金を持っていそう × 警戒心が薄い」エリアの人と答えると思います。成功したときの期待値が一番高く、失敗して捕まるリスクが少ないからです。
この心理の裏には、人間の脳の特性や行動経済学で説明されている認知バイアス(思考の偏り)が複雑に関係していると、私は考えています。
行動経済学(プロスペクト理論)に、損失回避バイアス——人は同額の利益から得る嬉しさよりも、損失から受ける痛みを約2倍強く感じる——というものがあります。「損をしたくない(ローリスク)」という強い防衛本能と、「得をしたい(ハイリターン)」という欲望が同時に働くため、「リスクなしで儲かる話」を無意識に探し求めてしまうというものです。
この理論を次の式に当てはめると、どのエリアがターゲットになりやすいか、ほぼ説明がつきます。
リターン(報酬) ÷ リスク(捕まる確率)
ここで重要なのは、犯罪者に「警戒心が高そう」と思わせるだけで、ターゲットにされる確率が下がるということです。
警戒心が薄そうに見える人 トップ3
私の偏見ですが、警戒心が薄そうな人トップ3は下記のとおりです。
① バッグの口が開いている・チャックが閉まっていない
リュックやトートバッグの口が開きっぱなしになっている状態です。
② 貴重品をズボンの後ろポケットに突っ込んでいる
財布やスマートフォンをズボンの後ろポケットに入れ、頭が飛び出している状態です。
③ 歩きスマホやイヤホンで、周囲への注意が散漫になっている
歩きながらスマートフォンを注視している、または両耳にイヤホン(特にノイズキャンセリング)をつけている状態です。
どれも「意識」を変えるだけで改善することができます。今この瞬間から変えられます。
0円で変えられるもの|「目線」と「姿勢」
0円で変えられることは他にもあります。それは姿勢と目線です。下の写真を見比べてください。
目線|同じ道でも、見えているものがこれだけ違う

※道路は実際の写真です。手元とスマホ画面は解説用に合成したものです。

※道路は実際の写真です。人物は解説用に合成したもので、実在の人物ではありません。
目線を少し上に上げるだけで、得られる情報が格段に上がります。
①の視界では、道の先に人が立っていても気づけません。気づかなかったことに対しては、何も対処できないのです。②のように顔を上げていれば、距離を取る・道を変える・歩く速度を変えるといった選択肢が生まれます。同じ道を、同じように歩いているだけなのに、です。
姿勢|服装が同じでも、他人からの見え方は変わる

※イメージ画像(AI生成)
服装は同じでも、姿勢を正すだけで他人からの見え方はここまで変わります。
パターン2は、先ほどのマトリックスでいえば「警戒心が弱い」側です。目線が下がり、両手がふさがり、バッグの口から中身が見えている。パターン1は同じ人・同じ服のまま「警戒心が強い」側に移動しています。かかった費用は0円です。
まずは意識を変えて、守りを強化しましょう。
3. 子連れは、放っておくと「隙だらけ」に分類される
ここは、子連れ旅行研究所として一番お伝えしたいところです。
上の表をもう一度見てください。「警戒心が弱い」側の条件を並べると、こうなっています。
- 両手がふさがっている
- 注意が別のものに向いている
- 大きな荷物を持っている
- バッグの口が開いたままになっている
- 立ち止まったり、動きが止まったりする
……これ、子連れで出かけている日の自分そのものではないでしょうか。
私はそうでした。抱っこ紐で三女を抱えて、次女の手を引いて、リュックには着替えとおむつと水筒。上の子が「あっち行きたい」と言うたびに意識が持っていかれる。バッグは、水筒の出し入れを繰り返して開けっぱなし。
注意力を子どもに向けているのは、親として100点の行動です。 そこは変える必要がありません。
問題は、注意力の総量には限りがあるということです。子どもに8割を使っていれば、自分の持ち物に回せるのは2割しかない。スリはその2割の薄さを見ています。
だから子連れの防犯は、「もっと気をつける」では解決しません。 気をつける余力がないところに、気をつけろと言っても無理だからです。
代わりにやるべきなのは、注意力を使わなくても成立する状態を先に作っておくことです。具体策は第7章にまとめました。
4. 犯人のプロファイリング|スリの行動パターン
「隙のある人」を選んだあと、スリは実際にどう動くのか。特徴は3つあります。
① 視線と、身体の距離がおかしい
一般の人は、進行方向・店の商品・案内板・自分のスマホを見ています。
スリが見ているのは、他人のバッグのジッパー、ポケット、手元です。人の顔ではなく、人の「持ち物の口」を凝視している。
そして、混雑していない場所なのに、不自然に近い。これがいちばん分かりやすいサインです。すいているホームで、なぜかぴったり後ろについてくる人がいたら、それは偶然ではないかもしれません。
② 手元を隠す「ブラインド」を持っている
抜き取る瞬間の手を隠すため、季節に合わない上着を腕に掛けている、新聞や雑誌を胸元に掲げている、大きな紙袋や折りたたんだ傘を常に手にしている——こうした小道具を使います。「手控え」「ブラインド」と呼ばれる手口です。
真夏に、屋内で、なぜかジャケットを腕に掛けている人。ここは覚えておいて損がありません。
③ 混雑と混雑の「境目」を狙う
満員電車の中よりも危ないのは、乗る瞬間と降りる瞬間です。
理由は、そこが人の流れが滞り、身体接触が自然に発生する場所だからです。エスカレーターの乗り口、階段の踊り場、改札の手前。ぶつかっても誰も不審に思わない場所で接触してきます。
★ひとりとは限らない
見落とされがちですが、スリはチームで動くことがあります。
- 物色役(見立て) … ターゲットを選び、指示を出す
- 実行役(抜き手) … 実際に手を伸ばして抜き取る
- 受け取り役(逃げ手) … 盗んだ直後に品物を受け取り、その場を離れる
役割を分ける理由は明確です。実行役がその場で捕まっても、手元に証拠品がない状態を作れるからです。
これが、「怪しい人は1人だけ」という思い込みが危ない理由です。目の前の1人に気を取られている間に、後ろで抜かれることがあります。
文章だけだと想像しにくいところなので、参考になる動画を挙げておきます。
5. 犯人が「狩場」を選ぶ4つの条件
場所にも基準があります。次の4条件がそろう場所が「狩場」になります。
- 密着性 — 見知らぬ同士が接近・接触しても不審に思われない
- 注意散漫性 — 視覚や聴覚がイベントや案内板に持っていかれている
- 滞留性 — 人の流れが止まり、身動きが取りづらい
- 逃走性 — 群衆に紛れ、複数の出口から瞬時に離脱できる
具体的にはこういう場所です。
| 分類 | 具体的な場所 | 犯人が使う”隙” |
|---|---|---|
| 公共交通機関 | 通勤ラッシュの電車・バス/駅のエスカレーター・乗降口/空港・ターミナル駅の券売機 | 身動きが取れず接触に気づけない/乗り降りの一瞬の混乱/券売機や案内板に意識が向き手元が留守になる |
| イベント・観光施設 | 夏祭り・花火大会・フェス/テーマパークの待機列/観光名所の撮影スポット | 祭り気分で警戒心が大幅に低下/撮影で両手と意識がスマホに奪われる/人混みと夜間の暗がりが犯行を隠す |
| 商業施設・飲食 | セール中のデパ地下/フードコート・オープンカフェ/混雑した居酒屋 | 商品選びや会計でバッグの口が開きっぱなし/荷物や上着を席に置いて離席/アルコールで注意力が落ちる |
| 街頭・移動経路 | スクランブル交差点の信号待ち/街頭パフォーマンスの観客 | 立ち止まって歩きスマホをしている/パフォーマーに視線が集まり周囲が無警戒になる |
この表を読んで、ヒヤリとしませんでしたか。
夏祭り、花火大会、テーマパークの待機列、フードコート、撮影スポット。——子連れのおでかけで必ず通る場所と、ほぼ完全に重なっています。
私たちは毎回、狩場のど真ん中に、両手をふさいで入っていっているわけです。
6. 警察官の視点|不審者の見つけ方
ここは、現役の警察官からはなかなか出てこない話だと思いますが、私の経験からお話しすると——
警察官が街頭で不審者を見つけるとき、見ているのは服装や人相だけではありません。「普通の動きと違う動き」を見ています。
一般の人は「目的地に向かうため」に動いています。
犯人は「標的を探すため」「追及から逃れるため」に動いています。
この目的の違いが、必ず動作のズレとして表に出ます。着眼点は4つです。
① 視線と頭の動き
- 通行人の手元・ポケット・バッグの口を凝視している
- 人混みで何度もキョロキョロ振り返る
- 警察官や防犯カメラを過剰に意識し、視線が泳ぐ/露骨に目をそらす
② 人の流れに逆らう挙動
- すいているのに、特定の人物の後ろにぴったりついて歩く(追尾)
- 乗る気がないのに列の周りをうろつき、乗車間際に列を離れる
- 同じエリアを目的なく行ったり来たりしている(徘徊)
- ターゲットを見つけた瞬間、急に歩調が変わる/急に引き返す
③ 服装・所持品の不自然さ
- 暑いのに、手元を隠すための上着を腕に掛けている
- 深い帽子・サングラス・マスクで顔を隠している
- バッグを体の前の不自然な高さに掲げている
④ 身体反応
- 警察官と目が合った瞬間にピクッと固まる
- 歩く速度が急に変わる、路地や店へ急に折れる
- 気温に関係なく異常に汗をかいている、手のひらを服で拭き続ける
この4つは、そのまま「防犯チェックリスト」になります
警察官はこれを犯人を探すために使いますが、危険を回避するための防犯情報としても有効だと私は考えています。
とはいえ、この4項目を常にスキャンし続けるのは難しいので、「違和感を感じたときには、その場を離れる」——これを意識するだけでも、危機回避能力は上がると思います。
7. 対策|「気をつける」をやめて、仕組みで守る
ここまで犯人の側を見てきたので、ようやく対策の話ができます。
繰り返しますが、子連れの防犯は根性では続きません。注意力を使わずに成立する状態を、家を出る前に作ります。
出かける前に済ませておくこと(注意力ゼロで効く)
- 貴重品を「開けにくい場所」に移す
後ろポケット・リュックの外ポケットは、犯人から見て看板を出しているのと同じです。ファスナー付きの内ポケットか、服の下のポーチへ。 - 財布を2つに分ける(資金分散)
その日使う分の現金と交通系ICだけを持つ「行動用」と、カード類・予備の現金を入れる「保管用」に分けて、別の場所に入れます。被害発生時のダメージを軽減できます。 - 財布に自宅の鍵と住所入りの身分証を同居させない
これが一緒に抜かれると、住所を知られたうえで鍵を持たれることになります。第8章で詳しく書きますが、被害の質が変わります。 - スマホに画面ロックと生体認証をかけ、「探す」機能をオンにする
すでにやっている方も多いはずですが、家族全員の端末で確認してください。抜かれるのは自分の端末とは限りません。
出かける時のルーティーン(声掛け)
私は、外出中に警戒レベルを上げる家族間のルーティーンを作ることが防犯に役立つと考えています。一例として、我が家の外出中のルーティーンをご紹介します。
- 「顔を上げて右左、たまには後ろも見る」
- 「前から自転車来てるよ、左に寄って」
——と、声を掛け合うことです。
サッカーの試合で、チームメイトが「後ろから来てるよ」「左フリー」等と声を掛け合うように、家族みんなで声を掛け合って危険を知らせ合うようにしています。
これと併せて上の対策を行うと、防御力はさらに上がるはずです。
対策をするデメリット
ここまで様々な対策案を書いてきましたが、私が書いた対策を全部やろうとすると、荷物の出し入れが確実に面倒になります。
水筒を出すたびにいちいちジッパーを開け閉めするのは、子連れではけっこうなストレスです。
だから全部やらなくていいと思っています。 優先順位をつけるなら、
- 貴重品の置き場所を変える(一度やれば以後ゼロコスト)
- 財布を2つに割る(出発前の1分で終わる)
この2つだけでも、被害の確率とダメージの両方を仕組みで下げられるので、試してみる価値はあると思います。
8. 被害にあった場合に起こる嫌なこと
対策のモチベーションになるので、被害時に発生する面倒なことについても触れたいと思います。
財布を抜かれた場合
| 段階 | 想定されること |
|---|---|
| 金銭の損害 | 現金の消失/財布本体の買い替え/ポイントカード・ギフトカードをそのまま使われる |
| 手続きにかかる時間的負担 | 被害届の作成(被害届、現場での写真撮影等)/クレジット・デビット・交通系ICの停止連絡と再発行(手数料+数日〜数週間の待ち)/運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証の再発行(役所へ出向く) |
| 二次被害 | タッチ決済や暗証番号不要の決済による即座の不正利用/身分証を使った消費者金融・携帯電話の不正契約、名義の悪用/免許証で住所を特定され、同時に盗まれた鍵で空き巣に入られる |
スマホを抜かれた場合
正直なところ、いまはスマホのほうが被害が重いです。
| 段階 | 想定されること |
|---|---|
| 金銭・金融 | PayPay・楽天ペイ・Apple Pay等の不正決済/保存されたカード情報や自動ログインでのオンライン買い物/キャリア決済を限度額いっぱいまで使われる/端末本体(10〜20万円超)の買い替え |
| アカウント乗っ取り | LINE・X・Instagram・メール・iCloud・Googleアカウントへの侵入/SMS認証コードが盗難端末に届くため2段階認証を突破され、パスワードを変えられて締め出される/電話帳・メッセージからの個人情報流出/写真・動画・仕事の書類の流出 |
| 生活の停止 | 通話・メッセージが一切使えず、緊急連絡もできない/モバイルSuica・航空券・スマートロックが使えず、移動や帰宅ができない/SIMを別端末に挿し替えられ(SIMジャック)、不正通話や別サービスへの登録に悪用される |
| 手続き | 回線停止・遠隔ロック・データ消去の緊急対応/警察とキャリアへの届け出/乗っ取られたアカウントから知人へ詐欺メッセージが飛ぶため、関係者への謝罪と注意喚起 |
旅行先でこれが起きると、帰る手段そのものを失います。 航空券もホテルの予約番号も家族との連絡手段も、全部その板の中にあるからです。
9. スリの現場を見かけたら|110番のセリフ台本
自分が被害者でなくても、目の前で起きることがあります。
大前提:自分で捕まえようとしない
絶対に、犯人を自分で取り押さえようとしないでください。
理由は2つあります。ひとつは、相手が単独とは限らないこと(第4章の役割分担)。もうひとつは、窃盗が強盗に変わることがあるからです。ご自身の身の安全を一番に考えてください。
離れた場所から通報することが、現実的に安全な選択肢だと思います。
110番のロールプレイング
通信指令室の担当者は、決まった順番で情報を取ります。 順番を知っておくと、慌てずに済みます。
指令員:「110番です。事件ですか、事故ですか」
あなた:「事件です。スリを見ました。」
指令員:「場所はどこですか」
あなた:「◯◯駅の東口改札を出てすぐ、コンビニの前です」
指令員:「いつのことですか」
あなた:「たった今、1分ほど前です」
指令員:「犯人の特徴と、逃げた方向を教えてください」
あなた:「男性、30代くらい、黒いキャップに黒い上着、腕に上着を掛けていました。北口方向へ歩いて行きました。」
指令員:「あなたのお名前と電話番号を」
あなた:「◯◯◯◯です。番号は090-◯◯◯◯-◯◯◯◯です」
伝える情報の優先順位は「発生日時、場所、罪名、犯人の特徴、逃走方向」です。
とくに場所が最優先です。場所さえ伝われば、話している間にパトカーが動き始めます。住所が分からなくても構いません。「◯◯という店の看板が見えます」「◯◯駅の何番出口です」で十分通じます。
特徴は、思い出せるものだけで大丈夫です。服の色と、逃げた方向。これだけでも貴重な情報になります。
通報するか迷ったら
「確信が持てないのに通報していいのか」と迷う方が多いのですが、迷ったら通報してもいいと思います。私が現役のころ、安全確認のための通報で何度も出動しましたが、異常があるかないか確認するのも警察官の大事な仕事の一つだと思っていたので、空振りがほどんどでしたが、苦になりませんでした。
違ったなら、それは何も起きていないということです。誰も困りません。確信を待っている間に、犯人は群衆に消えます。
10. まとめ|一番大事なこと
「意識」は今この瞬間から変えられる。
これだけです。
「姿勢を正して、目線を少し上げて周囲を見ながら歩く」
これだけで、あなたが狙われる可能性を下げることができると私は考えています。その上で、バッグを閉める、歩きスマホをしない等の対策を行うと、更に守りが強くなるはずです。
今日の記事が、あなたの防犯の参考になれば幸いです。今後も、子連れ旅行に関連する、元警察官視点の役立つ情報を発信し続けます。長文を読んでいただき、ありがとうございました。
【読者のみなさんへ】ヒヤリとした話を聞かせてください
この記事は、私の経験と、警察官として見てきた範囲で書いています。でも防犯の情報は、増えれば増えるほど社会にとっていいものだと思っています。
「この場所でヒヤリとした」「こんな手口を見た」という話があれば、ぜひ教えてください。いただいた情報は、個人が特定できない形にしたうえで、この記事の追記や続編に反映させていただきます。
※本記事は一般的な防犯情報です。犯罪の被害にあった、またはあいそうな状況では、ためらわず110番または最寄りの交番へご連絡ください。

